窓の外は暗い。夜だから、と言えばそれまでだが、漆黒の闇という言葉がピッタリの暗さだ。今日は、『月』も眠っているらしい。
私が、『月』と出会ったのは、冬の寒い日のことだった。
その日は、夕方まで雪が降っていたのだが、仕事から家路に向かう頃には、すっかりやんでいて、空にはきれいな三日月が顔を出していた。駅に向かう途中の店のショーウィンドウのガラスに、その月がうつっていた。そのガラスには、「あなたを夢の世界にお連れします」という、古びた文字があった。その文字のちょうど上に、三日月がきれいにうつっていた。
その月が、ニコッと笑った。思わず、空を見上げたが、月の横の星がまたたいていただけだった。最近、疲れているけれども、よく眠れていないので、気のせいだ。
そう言えば、ここに、こんな店があっただろうか?いつも、仕事からの帰り道は疲れ果てて、まわりの景色も見ずに帰り道を急ぐので、見落としていたのかもしれない。店の看板を見ると、どうやら漢方薬の店である。朝6時閉店、と書いてある。時計を見ると、今、夜の10時30分。ショーウィンドウは月がうつっているくらい暗くなっていたので、店が閉まっているように見えたが、店の入り口のほうを見ると、明かりがもれており、「開店中」の札がかかっていた。
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